メイバンダバン 〜レビュー募集中〜

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当ブログの更新停止のお知らせ

様々な方に記事を書いていただき、音楽好きの憩いの場として機能させようとしてきたこのブログですが、この度、更新を停止させることにしました。

 

記事が思うように集まらず、アクセス数も芳しくなく、管理人のモチベーションを維持することが難しくなったことが理由です。

 

『音楽だいすきクラブ』が機能していたのは、ひとえに管理人のpittiさんの人望、知名度、運営能力あってゆえなのだなぁと思う次第です。

 

記事は残しておきますので、お好きな時にお読みください。管理人のよーよーは『とかげ日記』 https://ameblo.jp/yoyo0616/ で引き続き記事を書いていきますのでよろしくお願いします。

ヒグチアイ『日々凛々』(byイカリ)

 

日々凛々

日々凛々

 

 

ヒグチアイは2014年2年に1st ALBUM「三十万人」をリリースした、シンガーソングライター。

2015年3月にセルフプロデュースによる2nd ALBUM「全員優勝」をリリースし、2016年11月にFull ALBUM「百六十度」でメジャーデビュー。

今作はメジャーアルバム2作目にあたる。ヒグチアイが大ファンだという、漫画家・池辺葵の描くジャケットインパクトあり。


1.「わたしはわたしのためのわたしでありたい」

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素晴らしいリード曲。

静かな導入部から、徐々に張り詰めたテンションが上がっていき、強い意志となって聴き手に迫ってくる。

「現状に満足していない」「ちゃんと自分の尺度で自分の幸せを計れる人でありたい」とインタビューで語っているように、幸せの尺度を持っているのはあくまで自分であり、他者と比べられるものではない。※チケットぴあインタビューより

しあわせの数 増えて見つけた
ちいさなかわいい家
これが全てだ そう言った友よ
しあわせでいて

歌詞のこの部分に、そうした思いがよく表れている。

アルバムの出だしとしては満点。

なお、この曲は、愛を歌うシンガーソングライター ヒグチアイのおすすめ曲8選+12018年上半期ベストソング】私的Top15をランキング形式で紹介!でもとりあげているので、そちらもご覧ください。

 

2.「永遠」

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 アップテンポのナンバー。イントロからスピードに乗った打鍵が繰り出される。※MVは50秒からイントロ

「永遠、という言葉は時間の名称ではなく感情の名称だと思った日があった」というコメントが示しているように、「永遠は 感じるものだ」と気づく瞬間が歌詞の中で綴られている。

 

3.「コインロッカーにて」

さらにアップテンポナンバーでたたみかける。

テーマは「間引き」。とはいえ子を殺すのではなく、「男の人が浮気をする、その“芽を摘む”という意味での“間引き”」とのことだ。※CDジャーナルインタビューより

とおりゃんせ とおりゃんせ
いきはよいよい かえりはこわい
とおりゃんせ とおりゃんせ
いなけりゃいいのは ほんとはわたし

 

「とおりゃんせ」の歌詞をもじった最後の部分は本音のようにみえて、実は気を引こうとしているのかもしれない。そんな駆け引きが透けて見えるようだ。

 

4.「かぜ薬」

ミドルテンポのバラード。

39度の発熱。この熱が下がらなければ、君はずっといてくれる。だからずっと熱が続いて欲しい。

でも熱は下がり、「別れ話」のとおりに別れてしまう。「2日分 残された薬」が別れた人の優しさを感じさせる良曲。

 

5.「玉ねぎ」

失恋の涙を玉ねぎを切ったからとごまかす歌。

「ありきたりなエンディングの映画で泣けちゃうくらい 泣きたいんだ」という歌詞が心のありようをよく表している。

涙を玉ねぎのせいにするのもありきたりではあるが、そんな日常の延長に別れがあるという、はかなさの象徴として玉ねぎをモチーフにしていると感じた。

バラードでありながら3分48秒と、比較的短めにまとめられているのが、かえって印象を深めるのに成功している。

 

6.「わたしのしあわせ」

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やわらかなイントロから、淡々と自分の状況を歌い上げていく。

「わたしのしあわせは誰のものでもない」、つまり自分のものであるということ。これはリード曲にも繋がるテーマだ。

自分の幸せをちゃんと自分でわかっていたいんですよね。
幸い今の私は、ちゃんとこう思っている気がしていて。
だからこの曲が自分のバロメーターで、こう思えてるかどうかみたいなところはありますね。エキサイトミュージックインタビューより

このことをわかったうえで聴くと、よりじわりと心に染み入ってくる。

 

7.「ぽたり」

21歳の時に書いた曲とのこと。雨と涙で「ぽたり」を表現した歌詞。

食って寝て泣いて 腹へって また食って
まわって また同じ所に戻って

ただ同じ毎日を繰り返しているようでありながら、最後には「君はずいぶん変わった」という変化が訪れるという、希望を感じさせる歌だ。

 

8.「不幸ちゃん」

彼の浮気を追い詰めていく歌。

写真のチェックは風景も外さない
一人でこんな場所に行くはずないじゃん
白白黒黒白黒黒黒 器用じゃないもんね
 
「白黒」というのは、「あいつはシロか? クロか?」と疑惑を持つ時に使われる、あの表現だ。それをリズミカルに並べるという感覚が面白い。

数々の証拠をおさえ続け、果ては「フォロワーチェック」「いいね!」「鍵アカ」もチェックする。最後、「黒黒黒黒黒黒真っ黒」と塗りつぶされてしまう。

サンバ調で明るい曲調が怖さを希釈しているが、歌詞だけ見るとすさまじい執念。

しかし、この不幸を先祖のせいにしたりして、自分ではどうにもできないという諦めを表しているようにも思える

 

9.「最初のグー」

「最初のグー」に関しては、ヒーローみたいな題材があったんです。
だからヒーローを見ている女の子を想像して書いたんですけど、すごく楽しかったです。自分のことじゃないので、自分を切り売りしなくていいから。
だけど結果的に私はこういうことを言われたいのかもしれない、みたいな歌詞になりました。エキサイトミュージックインタビューより

とあるように、歌詞にその思いが反映されていると感じる。

ちょっとこぶしの効いた曲調にもなっていて、力強さにあふれた曲だ。

 

10.「癖」

スローバラードでアルバムを締める。

誰 誰しもが欲しがられたいのだ
生きている意味は 誰かがくれるもの

しあわせは自分の尺度ではかるものだけれど、生きている意味は他者がくれる。誰かがいてくれることで、生きる意味は与えられるのだ。

しあわせとイコールではないが、それも確かに大切なことだ。

 


「しあわせ」と「私」が本アルバムの芯を貫いている。「自分のために幸せになる」ことは決して間違いではないし、むしろ当然なこととして受け入れることができる。

今の自分の状況に迷っている、今の自分が幸せなのか判然としない、そんな時にこのアルバムを手に取ると、ふっと大切なことに気づく瞬間が訪れるかもしれない。

CDにはヒグチアイ自身による全曲解説が添えられている。ぜひそちらも読んでみてほしい。

実に濃密で何度でも繰り返し聴いていたくなる、そんなアルバムを作り出してくれた。本作が気に入ったらライブにも足を運ぶと良いと思う。ヒグチアイの語る「しあわせ」を目撃しよう!

・ノリフネ!~乗りかかった船~「今日の1枚 vol.8 – ヒグチアイ『日々凛々』(2018年)

 

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【アーティスト紹介】THE COOL CHIC CHILD(by deamu)

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・メンバー
上條貴志(Vo.)
家垣康伸(Gt.)
藤森正博(Gt.)
桝田智彦(Ba.)
原健二(Dr.)

 

・来歴
1994年、元Ber:Sati、NUDEのボーカル上條貴志を中心に結成。
インディーズのデンジャークルーレコードから1995年にシングル「GROWING UP!」、1996年にアルバム「SPY"C"」をリリース。
1997年、「Clover~風立ちぬ場所を抜けて~」でTOY'S FACTORYよりメジャーデビュー。メジャー在籍中6枚のシングルと2枚のアルバムをリリース。
1999年にインディーズに戻り、翌2000年のファンクラブ限定ライブをもって解散した。

 

・自分の好きな曲順
1 僕は僕らを忘れない
2 Clover~風立ちぬ場所を抜けて~
3 BOOGIE DAYS~イキに生きよう~
4 My Shooting Star
5 パーフェクト・ラブ
6 ダイアリー
7 GROWING UP!
8 Day by Day
9 Hello, My Girl Friend
10 I WANNA HOLD YOU
11 sky-pilot
12 海辺
13 50/50で行こう!
14 君でとかす午後
15 Heartache
16 Walkin' On The Blue Days
17 Bye Bye Dream -あの日の気持ち-
18 New Heaven
19 クラウディ
20 Your Garden, My Flower

 

・好きなアルバム
1 Spider (1997年、2nd)

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たぶん去年一番聴いたアルバム。CCCの持ち味である爽やかなポップロックが全編に渡って展開。Trueの頃のラルクをよりポップ方向に振り切らせた感じ。歌唱にクセのない初期SOPHIAとも言えそう。ボーカル上條の上手いとは言わないがナルシシズム溢れる味のある歌唱も魅力。V系に馴染みのない人にも自信を持ってオススメできる名盤です。

好きな曲
・Clover~風立ちぬ場所を抜けて~

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・パーフェクト・ラブ

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・BOOGIE DAYS~イキに生きよう~

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・ダイアリー

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・僕は僕らを忘れない

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僕は僕らを忘れないC/Wの「Day by Day」入れて欲しかった。絶対合ったのに。

 

2 NEWHEAVEN (1998年、3rd)

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ラストアルバム。前作よりもロック色が増したアルバム。それでも楽曲の良さは変わらず。だけどこのバンド聴きたくなったらやっぱり「Spider」を聴いてしまうので聴く機会はあんまりなかった。こちらはラルクSOPHIAよりGLAYっぽい感じがします。「君でとかす午後」の歌詞の詰め方とか特に。

好きな曲
・I WANNA HOLD YOU

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・sky-pilot

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・My Shooting Star

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・君でとかす午後

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・NEWHEAVEN

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My Shooting Starが頭一つ抜けて名曲。

 

3 SPY"C"(1996年、1st)

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インディーズ時代のデビューアルバム。デンジャークルーなので文字通りラルクの後輩ですね。キャッチコピーは「大胆不敵なポップス大作戦」(ダサッ)
キャッチコピーに違わずこちらも超ポップアルバム。「Hello, My Girl Friend」なんかはもうV系の括りではない同年代のポップスバンドが歌ってそうなくらい。そこが売れなかった原因なのかもしれないが…。

好きな曲
・Hello, My Girl Friend

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・50/50で行こう!

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・Your Garden, My Flower

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・GROWING UP!

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・Walkin' On The Blue Days

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THE COOL CHIC CHILD、今からでも再評価されるべきバンドです。V系大好きな人も、そうでない人も一度彼らのポップスを是非。

 

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【2010年代の邦楽名盤④】MOROHA『MOROHA III』(byよーよー)

●2016年のベストアルバム候補
雷に打たれるような衝撃を覚えた前作から3年、また地上を穿つような新鮮な雷に打たれている自分がいる。

前作までの二作は曽我部恵一氏の主宰するローズ・レコードからアルバムを出していたが、今作は自主レーベルYAVAY YAYVA RECORDSからリリース。

トーク番組「しゃべくり007」への二度の出演やスマホのCMなどでのナレーション、クラムボンのアルバムに作詞で参加するなど、活動の幅を広げてきたMOROHA。MCのアフロによる『俺のがヤバイ』というタイトルのエッセイ本も出版した。それらの活動では、自分たちの志を守りつつ、大人達の打算と付き合っていこうとする姿が垣間見える。

ファーストアルバムからセカンドアルバムに向かうに連れ、ギターもラップも感情がより乗るようになり、華のようなものも増した。サードアルバムである本作は前作のクオリティを維持しつつ、新たな挑戦とエモーションが渦巻くものになっている。

新しい挑戦の一つはUKのアコギにパーカッシブな音が加わったこと。アコギのボディの様々な所を叩いて音を出しているようだが、複雑なメロディを奏でながら同時並行でアコギを叩く技量がすごい。得意のアルペジオも本作はさらに磨きがかかっている。エコーがかかるとアコギの音色に心の円の隅々が染まるようだ。

●成熟した大人になり、得たものと失ったもの
本作と前作の大きな違いはリリックの成熟だ。前作の#2「革命」におけるリリックを#3「宿命」で翻す。歌詞カードには書いていないリリックだが、以下のリリックがある。『(「革命」の時の)「居酒屋だけの意気込みじゃゴミだ」と息巻いていた自分たちはめちゃめちゃダサかったよな、若かったよな、黒歴史だよな。だけど、あの頃の俺たちから見たら、今の俺たちは何色の未来なんだろうね?』。成熟で失ったものを描くことを忘れていないのだ。

そんなMOROHAは#6「VS」において、「明日死んでも構わねぇなんて飛び込めた十代と/明日が恐い 未来が恐い/だからこそ飛び込む今現在/なぁどっちが勇気だと思う?/なぁどっちが力強いと思う?」と歌詞で問いかける。答えを曲中で出さないところがMOROHAらしい。

その一方で#1「RED」、#2「それいけ、フライヤーマン」などの曲で表現されるような大人ならではのガムシャラさもある。

破格のエナジーを感じた前作は緩みを許さない青春のガムシャラさの息苦しさがあったが、本作のMOROHAは成熟した大人のガムシャラさの頼りがいがある。

●揺るがないもの
前作の#3「ハダ色の日々」のような愛を歌う歌ももちろん健在だ。#4「Apollo 11」、#5「スペシャル」、#7「tomorrow」、#9「Salad bowl」がそれに当たるが、特に#4「Apollo 11」は、アフロの前の彼女が結婚式を行うので作った曲だが、こんなにも暖かい、永遠のように安定した善意と愛はここでしか聴けない。中村一義100sの『世界のフラワーロード』で示した安定した善意と愛は世界に対してのものだったが、本作の善意と愛はもっと泥臭いフェイストゥーフェイスの善意と愛だという気がする。

そして#8「GOLD」や#10「四文銭」のようなリスナーをその血潮の熱さで鼓舞する曲に安心するのだ。ここ最近の僕は根拠のある批判にひるみ、根拠のない悪意を恐れ、身近な友人の「死にたい」という言葉に引き寄せられるように、タナトスの憂鬱の底にいた。MOROHAのアフロが「だいじょぶ だいじょぶ」と歌うと憂鬱が安堵に変わる。これから苦しくなった時に僕は何度もこのアルバムに立ち返るのだろう。絶対に揺るがない愛も熱意もここにあるんだなって。

 

MOROHA III

MOROHA III

 

 




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2つの革新がもたらされた新作〜「ホームタウン」/ASIAN KUNG-FU GENERATION(by softman)

タイトル:「ホームタウン
アーティスト:ASIAN KUNG-FU GENERATION
 

よく考えたら前作からもう3年半経過していたアジカン


確かにアジカンは精力的に活動してました
「ソルファ」の再録をリリースしたり、アリーナツアーを行ったり、ベストアルバムを3枚リリースしたりと
でもオリジナルアルバムはリリースしてなかった
それは「Right Now」などのシングル曲がゴッチが作りたかったパワーポップ作品の雰囲気に合わなかったから
結局、シングルをベスト盤に流して、ようやく作品が完成しました
 
さてこの作品と切っても離せないキーワードが2つあります
まずは製作
それはこの作品にアジカンメンバー以外が作曲した曲が4曲もあるということ(しかもうち1つはホリエさん!!)
 
ロックバンドでメンバー以外が作曲した曲を演奏するなんて前代未聞
デビューしたてのflumpoolも「花になれ」や「Over the rain〜」がバンドの作曲ではなかったため、賛否を呼んでました
しかしアジカンがあえてそれを行った理由
それはコンピレーションアルバムを通して、どんな曲もアジカンになると気付いたから
これは将来的に誰かにプロデュースしてもらう作品のテストとゴッチは話していましたが、同時にこれは「ロックバンドの曲はロックバンドの曲でならなければならない」という概念を破壊しに来たということです
これが1つめの特徴
 
もう1つはサウンド
去年からUVERworldTAKUYA∞やGLIM SPANKYが提言していたローの強化
それを根本から弄ってきました(「クロックワーク」を聞けばそれがよく分かる)
 
国内のアーティストの作品ってどうしても低音が弱い
ライブに行くときはともかく、音源だと低音が全然聞こえなかったりします
個別レビュー書くときなんか、もろにその影響を受けてまして、実はイコライザーで低音強化して書いてるんですよあれ
そうでもしないと細かい低音が拾えなくなっています
 
で今回の作品ではそれにメスを入れたわけですが、前作「Wonder Future」でアジカンサウンドは目に見えて分かるほどラウド化しました(それにKANA-BOONが影響を受けて、KANA-BOONも音作りを変更)
つまりこの2作で音作りを世界基準に持っていたわけです
世界基準で戦える特徴にした
それが2つめの特徴
この2つの特徴は日本のシーンには革新と呼べるものでしょう
 
その上でこのアルバム
ゴッチが「パワーポップ」のアルバムを作りたいと話していた通り、このアルバムはポップ
前作の「Wonder Future」のような轟音ロックを見せるのは「Can't Sleep E.P」に収録されている「イエロー」くらい
初期みたくソリッドなギターロックを見せている曲は数少ないです
 
でも突然ブレイクダウンしてゴッチがラップを始める「レインボーフラッグ」、感情を解き放つかのように起伏が激しい「UCLA」、エモさと美しさの二重構造「モータープール」と一粒一粒が名曲
ホリエが作曲したため、もろストレイテナーを彷彿させるつくりとなっている「廃墟の記憶」、スケール大きい「スリーブ」、「はじまりの季節」とコラボ盤もエバーグリーンな曲が勢揃いです
 
またサウンド面を見落としたからこそ、輝いている曲もあり、リズム隊が最高にクールな「ホームタウン」、低音と高音のバランスが良い「さよならソルジャー」、静と動をギターで現した「クロックワーク」
サウンド面の見直しは作品にも好影響を表しているようです
 
他にも静かながらも燃えるものがある「ダンシングガール」、ギターが素晴らしいながらも歌詞に刃が潜む「サーカス」が並びますが、全体的にポップなので賛否は間違いなく出ます(自分だって未だに「ワールド ワールド ワールド」を最高傑作と思ってる)
でもこのアルバムは日本のシーンを変えた1枚と評価される日がいつか訪れるんじゃないかなと思います
このような挑戦をしたアジカンに拍手
 
なお、このアルバムですがTSUTAYAなどのレンタルショップではEPが入ってない通常盤のみレンタルになっている可能性があります
レンタルする際は収録内容をよくご確認することを推奨します
そのうえ、2枚合わせると演奏時間が70分に達しますので別々に聞いた方が良いかも?
 
評価:★★★★
 

なるべくして生まれた最高傑作 〜「F」/フジファブリック〜(by softman)

タイトル:「F
アーティスト:フジファブリック
 

もう既に各所で絶賛されているフジの新作「F」

自分はFC限定ライブで一足先に聞いているため、このアルバムが凄いことになると予想はしてましたが、ここまで行くとは…
なおこのアルバムには様々な「F」が含まれてますが、それはTaking Rockを読めば明らかになるので割愛
 
さてフジの作品といえば毎回変化する作風
以前、制作を終える度にリセットすると話していましたがそれは今作でもそう
「破顔」では今までにないほどノイジーなギターロックが展開されますし、「Feverman」ではくるりの「東京レレレのレ」、キュウソネコカミの「KMDT25」のような和のビートを導入
色んな意味で話題になっている「東京」は、「ダンス2000」を更にディープにしたかのようなファンク
またまた新しい作風を見せています
 
また今回の作品は「STAND!」と異なり新曲だらけ(というかその前にリリースされた「FAB FIVE」に配信リリース曲を詰め込んだというべき?)
シンプルで味わい深い「Walk On The Way」、スカパラホーンズも参加した「恋するパスタ」、直球ギターロックの「High & High」、それにサイケな「前進リバリティ」
新曲中心だけあって、ボリュームも満点です
 
個人的に面白いのが「Let's Get It On」
ファンクやダブステップの影響が感じられる曲ですが、サビになるとまさかの掛け声が
曲中に合いの手が加わる曲はあまりありません
初見のインパクトはかなりの物でしょう
 
前作の「STAND!」も悪くはなかった
けど新曲の少なさが仇となってしまい、最高傑作とはお世辞にも言えず
でも今回の「F」はそうした欠点はなし
今度こそ最高傑作といえます
 
ただ、今回の作品が最高傑作になるのは必然でした
というのも「音楽と人」で山総のインタビューを読んでいると、彼相当な悔しがる性格みたいで
「もっとこのバンドは評価されていい」
「なんでみんな(フェスで)僕たちを見ないんだ!!」
と彼の悔しさがにじみ出てました
だからこそ、今回のアルバム、彼の熱が凄かったと加藤さんや金澤は話していました
その熱量がこのアルバムを生んだのです
 
これまでは「LIFE」や「TEENAGER」が最高傑作だと思ってましたが、遂にそれを超えてきました
文句なしの最高傑作です
 
評価:★★★★★
 

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F(初回生産限定盤)(DVD付)(特典なし)

F(初回生産限定盤)(DVD付)(特典なし)

 

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ただの企画ものと思うなかれ 〜「ジェニーハイ」/ジェニーハイ〜(by softman)

 

ジェニーハイ

ジェニーハイ

 
タイトル:「ジェニーハイ
アーティスト:ジェニーハイ
 

ラノベ界でいうなら鎌池和馬、芸能界なら星野源に匹敵するほどの労働ぶりであり、本人も事実上ワークホリックであることを自覚(ある雑誌のインタビューで何かしないと死んでしまうと発言)している川谷絵音

そんな絵音がindigo la Endゲスの極み乙女。、本人が楽曲製作を担当するDADARAYに次ぐ第4のバンドとしてジェニーハイを指導させました
 
って言ってもこのバンド、BAZOOKA!!!という番組の知名度を上げるために結成された企画バンド
ですがメンバーには絵音をはじめ、tricotのボーカルである中嶋イッキュウ、編曲家である新垣隆がいる強力な布陣
更にドラムの小籔千豊とはゲスの極み乙女。の「私以外私じゃないの」を絵音の目の前で忠実にコピーしたり、ベースのくっきーはTHE SESELAGEESというバンドでギター、並びに作詞作曲を担当しているなど遊びではないことはここまで書けば明らかでしょう
 
そんなジェニーハイのデビュー作
既に「片目で異常に恋してる」で大きなインパクトを与えただけに注目していましたが、これがとんでもない名盤でした
 
「ランデブーに花束」はユニークな歌詞が関心を引きますが、パワーコードが心地よく聞こえるのはなかなかのレアケース
「強がりと弱虫」は音数少ないベースながらもグルーヴ抜群
ですが終盤に突如混沌とするなど一筋縄では行かない曲となっています
 
こういった珍現象やごちゃごちゃとした構成が起こり得てもしっかりまとまっているのは新垣の存在が大きいです
思えばゴーストライター騒動で良くも悪くも話題となってしまった彼ですが、流石はプロの作曲家
こんな展開でもきっちりキャッチーに仕上げてくれるのはお見事です
更に彼の技術はラストの「東京は雨」でも活かされ、絵音ともに美しきメロディーの雨を降らせています
 
なおこのバンド、ボーカルはイッキュウが勤めているのですが、「スーパーマーケットフレンド」では絵音がボーカル担当
ライブだと恐らくイッキュウがギターを勤めると思われますが、キャッチーなのに毒っぽさを匂わせる歌詞はゲスの極み乙女。の初期を思い出させますね
こんなところに着眼するとは思いもしませんでしたが
 
「ジェニーハイのテーマ」は好き嫌い別れるので置いときますが、このアルバムで絵音のメロディーセンスが優れているか、改めて証明されました
今年リリースされたゲスの極み乙女。indigo la Endのアルバムは素晴らしい出来でしたが、このアルバムもやはり傑作
どんなメンバーでも臨機応変に対応し、力作を作り上げる
絵音の手腕は恐ろしいものです
 
同時にシーンに出てきたい若手にはこのアルバムが障壁となることでしょう
以前、サカナクションがライブシーンに置いて若手の変革を阻止する防波堤として機能していると書きましたが、ネクストブレイクを志すアーティスト(特にバンド)はこのアルバムを越えなければなりません
 
絵音は今のシーンの中心といえるメロディーメーカー
彼がいればどんなメンバーだろうが秀作となることをこのアルバムが裏付けています
ならば、このアルバムを超える作品を生み出すことが課題となるでしょう
実際、期待の若手はこのアルバムを上回る出来を残しています
 
企画ものだろうが手加減なし
改めて絵音ってすごいなあ…