ヒグチアイ『日々凛々』(byイカリ)
ヒグチアイは2014年2年に1st ALBUM「三十万人」をリリースした、
2015年3月にセルフプロデュースによる2nd ALBUM「全員優勝」をリリースし、
今作はメジャーアルバム2作目にあたる。
1.「わたしはわたしのためのわたしでありたい」
素晴らしいリード曲。
静かな導入部から、徐々に張り詰めたテンションが上がっていき、
「現状に満足していない」「
しあわせの数 増えて見つけた
ちいさなかわいい家
これが全てだ そう言った友よ
しあわせでいて
歌詞のこの部分に、そうした思いがよく表れている。
アルバムの出だしとしては満点。
なお、この曲は、愛を歌うシンガーソングライター ヒグチアイのおすすめ曲8選+1、【
2.「永遠」
アップテンポのナンバー。
「永遠、
3.「コインロッカーにて」
さらにアップテンポナンバーでたたみかける。
テーマは「間引き」。とはいえ子を殺すのではなく、「
とおりゃんせ とおりゃんせ
いきはよいよい かえりはこわい
とおりゃんせ とおりゃんせ
いなけりゃいいのは ほんとはわたし
「とおりゃんせ」
4.「かぜ薬」
ミドルテンポのバラード。
39度の発熱。この熱が下がらなければ、君はずっといてくれる。
でも熱は下がり、「別れ話」のとおりに別れてしまう。「2日分 残された薬」が別れた人の優しさを感じさせる良曲。
5.「玉ねぎ」
失恋の涙を玉ねぎを切ったからとごまかす歌。
「ありきたりなエンディングの映画で泣けちゃうくらい 泣きたいんだ」という歌詞が心のありようをよく表している。
涙を玉ねぎのせいにするのもありきたりではあるが、
バラードでありながら3分48秒と、
6.「わたしのしあわせ」
やわらかなイントロから、淡々と自分の状況を歌い上げていく。
「わたしのしあわせは誰のものでもない」、
自分の幸せをちゃんと自分でわかっていたいんですよね。
幸い今の私は、ちゃんとこう思っている気がしていて。
だからこの曲が自分のバロメーターで、こう思えてるかどうかみたいなところはありますね。※ エキサイトミュージックインタビューより
このことをわかったうえで聴くと、
7.「ぽたり」
21歳の時に書いた曲とのこと。雨と涙で「ぽたり」
食って寝て泣いて 腹へって また食って
まわって また同じ所に戻って
ただ同じ毎日を繰り返しているようでありながら、最後には「
8.「不幸ちゃん」
彼の浮気を追い詰めていく歌。
写真のチェックは風景も外さない
一人でこんな場所に行くはずないじゃん
白白黒黒白黒黒黒 器用じゃないもんね
数々の証拠をおさえ続け、果ては「フォロワーチェック」「
サンバ調で明るい曲調が怖さを希釈しているが、
しかし、この不幸を先祖のせいにしたりして、
9.「最初のグー」
「最初のグー」に関しては、ヒーローみたいな題材があったんです。
だからヒーローを見ている女の子を想像して書いたんですけど、すごく楽しかったです。自分のことじゃないので、 自分を切り売りしなくていいから。
だけど結果的に私はこういうことを言われたいのかもしれない、みたいな歌詞になりました。※ エキサイトミュージックインタビューより
とあるように、歌詞にその思いが反映されていると感じる。
ちょっとこぶしの効いた曲調にもなっていて、
10.「癖」
スローバラードでアルバムを締める。
誰 誰しもが欲しがられたいのだ
生きている意味は 誰かがくれるもの
しあわせは自分の尺度ではかるものだけれど、
しあわせとイコールではないが、それも確かに大切なことだ。
「しあわせ」と「私」が本アルバムの芯を貫いている。「
今の自分の状況に迷っている、
CDにはヒグチアイ自身による全曲解説が添えられている。
実に濃密で何度でも繰り返し聴いていたくなる、
・ノリフネ!~乗りかかった船~「今日の1枚 vol.8 – ヒグチアイ『日々凛々』(2018年)」