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2つの革新がもたらされた新作〜「ホームタウン」/ASIAN KUNG-FU GENERATION(by softman)

タイトル:「ホームタウン
アーティスト:ASIAN KUNG-FU GENERATION
 

よく考えたら前作からもう3年半経過していたアジカン


確かにアジカンは精力的に活動してました
「ソルファ」の再録をリリースしたり、アリーナツアーを行ったり、ベストアルバムを3枚リリースしたりと
でもオリジナルアルバムはリリースしてなかった
それは「Right Now」などのシングル曲がゴッチが作りたかったパワーポップ作品の雰囲気に合わなかったから
結局、シングルをベスト盤に流して、ようやく作品が完成しました
 
さてこの作品と切っても離せないキーワードが2つあります
まずは製作
それはこの作品にアジカンメンバー以外が作曲した曲が4曲もあるということ(しかもうち1つはホリエさん!!)
 
ロックバンドでメンバー以外が作曲した曲を演奏するなんて前代未聞
デビューしたてのflumpoolも「花になれ」や「Over the rain〜」がバンドの作曲ではなかったため、賛否を呼んでました
しかしアジカンがあえてそれを行った理由
それはコンピレーションアルバムを通して、どんな曲もアジカンになると気付いたから
これは将来的に誰かにプロデュースしてもらう作品のテストとゴッチは話していましたが、同時にこれは「ロックバンドの曲はロックバンドの曲でならなければならない」という概念を破壊しに来たということです
これが1つめの特徴
 
もう1つはサウンド
去年からUVERworldTAKUYA∞やGLIM SPANKYが提言していたローの強化
それを根本から弄ってきました(「クロックワーク」を聞けばそれがよく分かる)
 
国内のアーティストの作品ってどうしても低音が弱い
ライブに行くときはともかく、音源だと低音が全然聞こえなかったりします
個別レビュー書くときなんか、もろにその影響を受けてまして、実はイコライザーで低音強化して書いてるんですよあれ
そうでもしないと細かい低音が拾えなくなっています
 
で今回の作品ではそれにメスを入れたわけですが、前作「Wonder Future」でアジカンサウンドは目に見えて分かるほどラウド化しました(それにKANA-BOONが影響を受けて、KANA-BOONも音作りを変更)
つまりこの2作で音作りを世界基準に持っていたわけです
世界基準で戦える特徴にした
それが2つめの特徴
この2つの特徴は日本のシーンには革新と呼べるものでしょう
 
その上でこのアルバム
ゴッチが「パワーポップ」のアルバムを作りたいと話していた通り、このアルバムはポップ
前作の「Wonder Future」のような轟音ロックを見せるのは「Can't Sleep E.P」に収録されている「イエロー」くらい
初期みたくソリッドなギターロックを見せている曲は数少ないです
 
でも突然ブレイクダウンしてゴッチがラップを始める「レインボーフラッグ」、感情を解き放つかのように起伏が激しい「UCLA」、エモさと美しさの二重構造「モータープール」と一粒一粒が名曲
ホリエが作曲したため、もろストレイテナーを彷彿させるつくりとなっている「廃墟の記憶」、スケール大きい「スリーブ」、「はじまりの季節」とコラボ盤もエバーグリーンな曲が勢揃いです
 
またサウンド面を見落としたからこそ、輝いている曲もあり、リズム隊が最高にクールな「ホームタウン」、低音と高音のバランスが良い「さよならソルジャー」、静と動をギターで現した「クロックワーク」
サウンド面の見直しは作品にも好影響を表しているようです
 
他にも静かながらも燃えるものがある「ダンシングガール」、ギターが素晴らしいながらも歌詞に刃が潜む「サーカス」が並びますが、全体的にポップなので賛否は間違いなく出ます(自分だって未だに「ワールド ワールド ワールド」を最高傑作と思ってる)
でもこのアルバムは日本のシーンを変えた1枚と評価される日がいつか訪れるんじゃないかなと思います
このような挑戦をしたアジカンに拍手
 
なお、このアルバムですがTSUTAYAなどのレンタルショップではEPが入ってない通常盤のみレンタルになっている可能性があります
レンタルする際は収録内容をよくご確認することを推奨します
そのうえ、2枚合わせると演奏時間が70分に達しますので別々に聞いた方が良いかも?
 
評価:★★★★